脳疲労はその名の通り脳が疲労困憊してしまっている状態です。体の疲労は筋肉痛や動きの悪さなどによって直ぐに気づくことできますが、私たちは自分自身の脳疲労に中々気づくことができません。なぜなら脳は、疲れきっていても痛みや痒みといった強いメッセージを発することができないためです。

脳疲労とアデノシン
脳細胞を含めた私たちの全ての細胞はアデノシン三リン酸、通称ATPという物質をエネルギー源としています。このATPが分解されることによって、エネルギーが発生し、私たちの細胞は活動することができます。ATPが分解される際に発生する副産物がアデノシンです。このアデノシンが脳にくっつくことによって脳疲労が生じると考えられています。

そもそもアデノシンは、私たちの脳に存在する受容体に結合することで覚醒作用のあるヒスタミンという神経伝達物質の働きを抑えます。つまりこのメカニズムによってアデノシンは眠気を催すことになります。たくさん体を動かすと脳を含めた体中でATPがたくさん分解され、アデノシンが大量に蓄積しています。このような大量のアデノシンが脳の受容体にピタッとくっつくことでヒスタミンが抑制され、眠たくなるというメカニズムがあります。

正常な体の場合、このように脳にくっついたアデノシンは、睡眠中に除去されて、朝になると眠気は綺麗さっぱりなくなっています。しかし脳疲労が進んで、 頭の中がアデノシンでいっぱいになると数時間の睡眠では全てのアデノシンを除去することができず、朝起きても頭の中にアデノシンがまだ残っていて眠気やだるさが取れず、次の日までだるさや眠気が持ち越されてしまうことになります。

一般にどれほど体を動かしても、次の日に持ち越されてしまうほどのアデノシンは生成されないと考えられています。むしろ体をたくさん動かしている肉体労働の人の方がぐっすり眠れて、次の日の朝からフレッシュに働いているようなイメージがあります。このように肉体疲労によるアデノシンによって朝起きてだるい症状が出るというのはあまり多くはありません。

次の日まで持ち越されてしまうほどのアデノシンを作り出してしまう疲労は、肉体の疲労ではなく脳疲労です。私たち現代人の脳疲労の原因は情報過多であると考えられており、情報過多とは脳に入ってくる情報量が多すぎて、脳が処理しきれなくなってしまっている状態のことです。21世紀に生きる私たちが1日に受け取る情報量は江戸時代の1年分、平安時代の一生分であるとも言われています。一方で脳は、ちっとも進化していないことが分かっています。私たちの脳細胞は平安時代の人たちと同じです。

さらに、脳疲労を促進させているのがストレスです。ストレスに晒されて脳が覚醒状態になると私たちはぐっすり眠ることができません。私たちの脳は眠っている時に情報を整理しますが、ぐっすり眠れないと情報の整理がうまくいかず、朝になっても脳の中の情報がごちゃごちゃのままになってしまいます。

絶対に放置してはいけない
朝起きてすぐだるくなる原因がうつ病の前ぶれです。先ほどの脳疲労と並んで私たち現代人を悩ませているものが心の疲労です。疲労しきってしまった心はうつ病という取り返しのつかないような大きな心の病の原因となってしまいます。うつ病の原因についてはまだ未解明なところが多いですが、少なくともその原因の1つに頑張り過ぎがあります。何か目標に向かって頑張るというのは、人生に張り合いを持たせるために大切なことです。目標に向かって頑張ることで 私たちは人生を楽しむことができますし、何よりそれによって若々しく希望を持って生きることができます。

一方で、頑張り過ぎることで私たちの心には相当な負荷がかかっています。このような負荷、つまり心の怪我を放置して傷口が開いていくとついにうつ病となり、最悪の場合2度と立ち直れなくなってしまいます。うつ病の初期症状としては様々なものがありますが、代表的なものに早朝覚醒と呼ばれるものがあります。

早朝覚醒はその名の通りで朝早くになぜか目が覚めてしまうことです。本当は7時ぐらいまで寝て良いのに、朝の3時とか4時ぐらいに目覚めてしまうのが早朝覚醒です。睡眠が足りず、アデノシンを初めとした疲労物質がまだ全然除去できていないにも関わらず、朝早く目覚めてしまいます。そのため目覚めているにも関わらず体や脳がだるくて全く動けないという状況になってしまいます。これがうつ病による早朝覚醒です。このような症状のため、うつ病の人というのは朝目覚めているにも関わらず起き上がれないことに悩まされます。

自律神経の錆
朝起き上がれなくなるのは、自律神経の錆が原因として挙げられます。いきなり自律神経の錆と言われても、あまり聞いたことない人が多いと思います。皆さんは、お肌の細胞が活性酸素という毒によって錆びてしまうというのを聞いたことがあると思います。自律神経も、お肌と同じく細胞からできており、有害な活性酸素に触れることによって錆びていきます。このように自律神経が錆びついていくことで、私たちは朝起きられなくなってしまいます。

私たちの睡眠には自律神経が密接に関わっており、夜寝る前に副交換神経を優位にしてリラックスすると良いというのは健康の常識です。逆に朝起きる時は交感神経を優位にすることで、私たちはスムーズに起き上がることができます。このような自律神経の切り替わりのメカニズムは、私たちの副腎にあるとされています。副腎は背中にある左右2つの腎臓の上にちょこんと乗っかった臓器です。

副腎からはコルチゾールという大切なホルモンが分泌されています。コルチゾールと言うとストレスホルモンとして有名であり、コルチゾールは朝の目覚めのために重要な役割を担っています。ホルモン分泌の日内変動によって朝方に血中コルチゾール濃度が高まるとストレスレベルが上昇して、私たちの体の中で交感神経が優位になります。交感神経は副交感神経と逆に体を快活にしてくれる自律神経のため、朝に向けて体はちょっとずつリラックス状態を解いて活動状態に入っていきます。このようなメカニズムによって朝が来ると同時に交感神経がマックスになって、気持ちの良い目覚めができるようになります。

しかし、コルチゾールに錆びついた交感神経が反応しなくなれば、朝の活力が全然湧いてこないことになってしまいます。これが自律神経の錆による朝の体のだるさの原因になります。ストレスホルモンであるコルチゾールがどんどん分泌されているにも関わらず、交感神経が反応しなければ、私たちの体では活力なきストレスがどんどん溜まっていってしまいます。そうなると朝起きるのが嫌になってしまうのも当然でしょう。このような自律神経の錆は、活性酸素がそもそもの原因となっています。

貧血による細胞の酸欠
朝起きてすぐだるい原因に考えられるのが貧血です。特に女性の方は貧血が原因で朝起きられない人が非常に多いので注意していただきたいと思います。貧血というのは、よく勘違いされることですが医学的には血が足りないことを意味しているのではありません。血液中にあるヘモグロビンという酸素を運んでくれる物質が少ないということを意味しています。つまり血が少ないのではなく薄い状態です。

私たちが息を止めて酸素を吸わないと死んでしまうのと同じように、私たちの細胞もまた酸素が供給されないと一瞬にして壊死してしまいます。貧血になって細胞に酸素を運んでくれるヘモグロビンが少なくなると、体の隅々まで酸素が行き届かなくなってしまいます。

脂肪燃焼という言葉の通り、細胞では脂肪をはめとする燃料が酸素によって燃やされることでエネルギーが作り出されています。ですが貧血になって細胞が貧血状態になると私たちの細胞は燃焼を起こすことができず、エネルギーを作り出すことができません。そのため全身の細胞が活動のためのエネルギー不足に陥って朝起きられないという症状が出てしまいます。

アデノシンと睡眠不足
朝起きてだるい原因は睡眠不足が考えられます。朝起きてすぐだるい原因の1つとして脳のアデノシンがまだ除去されずに残ってしまっていることを挙げました。その脳のアデノシンが除去されずに残ってしまう理由の1つが、アデノシンがそもそも多すぎるということです。一方で、もう1つの理由として睡眠が少なすぎることも考えられます。

何もしていないのに朝起きてすぐにだるいのは、そもそもの問題として睡眠時間が全く足りていないという原因が考えられます。特に注意しなければいけないのは、8時間ちゃんと寝ているにも関わらず、疲れが取れないというケースです。その場合は確かに睡眠の量自体は足りているものの睡眠の質が全く足りていない可能性があります。

また、睡眠の質が悪化している場合、例え物理的に8時間くらい寝ていたとしても実は睡眠不足に陥ってしまっているケースがあります。そんな人は例えば 一時的に9時間ぐらいに睡眠時間を増やしてみてはいかがでしょうか。それによって疲れが解消されるのであれば、実は睡眠不足の可能性が高くなります。

最高の薬は休むこと
私たち日本人というのは世界的に見ても非常に勤勉な民族で、働くのは得意でも休むのがとても苦手であると言われています。ですが休憩というのは、時には活動すること以上に大切なものです。特にうつ病とかうつ病になりかけの人にとっては休憩が不可欠です。うつ病に効く最高の薬は休むことであり、逆に休まなければどんな薬を使ってもうつ病は決して直すことはできません。

質の良い睡眠で疲労回復
質の良い睡眠は疲労回復に絶対に欠かせない条件です。質の良い睡眠は、しっかり体と心が休息でき、次の日はすっきりと目覚められて、日中は自分の力を 最大限に発揮し、夜になったら自然と眠くなるこういう状態に体を整えてくれます。しかし実際は多くの人たちが自分では気づかないうちに睡眠の質が悪くなるようなことをしてしまっているのが現実です。また長く眠れば睡眠の質が良くなるわけではありません。十分に疲れを取るために必要な睡眠時間は、およそ7時間から8時間と言われています。

睡眠の質を改善する方法は難しくなく、寝る2時間前には食事を終えることです。寝る前に食べてしまうと眠っている間も胃腸は働き続けないといけなくなり、そのせいでしっかり体を休めることも脳を休めることもできなくなってしいます。

また、寝る90分前にお風呂に入ることも大事です。ぐっすり眠るためには、湯舟に浸かり、深部体温を上げておくことが必要です。深部体温は体の内側、つまり内臓の温度のことで、この新部体温が急激に下がっていく時に人は眠たくなると言われています。そのためお風呂に入って湯舟に浸ることで深部体温を上げて、90分後には温度が下がっている状態にすると眠りがスムーズになります。ちなみにシャワーにすると体の表面だけが温まるだけで深部体温は十分に上がってくれません。

そして寝る1時間前からスマホを見ないことも大事です。スマホは、明るい光を放っているため、睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されにくくなってしまいます。またメラトニンには睡眠中に体を回復させる働きがあるため、メラトニンがしっかり分泌されないと睡眠の質が悪くなってしまい、さらに起きている間に受けたダメージや疲労をしっかり回復できなくなってしまいます。

快眠ミュージック
朝を快適に起きるためには、夜のルーティーンの中に人によってはお気に入りの音楽を加えるのも良いかもしれません。皆さんはパブロフの犬という言葉を聞いたことがあるでしょうか。パブロフの犬というのはロシアの生理学者であるパブロフが実験によって発見した私たち動物に生まれつき備わっている生理 現象です。

パブロフは自分の犬にベルを鳴らして餌を与え続け、餌が用意できるとベルを鳴らして犬にご飯の時間だよと知らせました。ベルを鳴らして餌を与え続けることで犬はベルを鳴らすだけでよだれが出るようになりました。よだれが出るという生理現象は、一般的に食べ物を前にして視覚的、嗅覚的な刺激が入って初めて起こるものです。しかしベルを鳴らしてから餌を与え続けるということを繰り返すことで、犬の中でベルという聴覚情報と餌が結びついて、ベルを聞いただけでよだれが出るようになったのです。

このようなパブロフの犬の実験は、私たちに備わった生理現象である条件反射というメカニズムによって説明することができます。条件反射は、私たちが後天的に、つまり生まれた後に獲得した反射行動のことです。反射行動は、私たちの意思に反して体が勝手に動いてしまうことです。一方で条件反射は、何度も何度も繰り返すことによって後天的に獲得することができます。このような 条件反射を入眠に応用したものこそが音楽です。

同じ音楽を聴いて眠るということを繰り返していくうちに、私たちはその音楽を聴いただけで眠たくなるようになります。ここで重要なのは、反射を促すためのきっかけとなる音楽は毎回同じものにするということです。また選ぶ音楽は副交感神経が優位になってリラックスできるような心地の良いリラクゼーション音楽のようなものが良いでしょう。

このような音楽による条件反射は心療内科や精神科で治療として用いられることもあります。実際、音楽療法が不眠症の患者さんのための治療法としても使われている例はたくさんあり、非常に有効だとされています。ただし人によっては音楽を聴くことに楽しくなってしまったり、交感神経が優位になってしまって、むしろ眠れなくなってしまう方もいますので、あくまでも自分に効果があるのかどうか一度試してみるべきということをお伝えしておきます。

前日からの準備
翌朝のパフォーマンスを上げるための準備は、その前日の朝からもうすでに始まっています。翌朝のパフォーマンスを上げるため前日の日中からやるべきことは朝日光に当たることです。私たちの体は日光に当たってから十数時間後にだんだん眠くなるように設計されています。そのため朝日光に当たる時間が遅くなってしまうと体が眠るための準備に入る時間もその分遅くなってしまい、夜眠れなくなってしまいます。そのため例え曇っていても朝起きたら必ずカーテンを開けてすぐに日光に当たるようにしてください。

また昼寝の是非については未だに科学的な決着がついておらず、様々な研究がありますが、少なくとも昼寝をし過ぎると夜の入眠が阻害されてしまうため、良くないというのは多くの学者で一致する見解です。そのため日中どうしても眠たくなってしまった時であっても昼寝は30分以内に抑えるようにしましょう。

疲労回復に効く食べ物
鶏胸肉のイミダゾールジペプチド
私たち人間の疲労回復の鍵を握っているイミダゾールジペプチドという物質をご存知でしょうか。このイミダゾールジペプチドは、主に筋肉内に存在し、疲労の原因である活性酸素を効率よく除去して、疲労回復を促してくれる物質です。このイミダゾールジペプチドは、加齢と共に減少していくことが分かっています。そのため年を取ると私たちはだんだん疲れやすくなってしまいます。

疲労回復のために必要なイミダゾールジペプチドは1日およそ200mgと考えられており、そのために必要な鶏胸肉の摂取量は僅か100gです。私たちは一般的に年を取れば取るほど疲れやすくなってしまう傾向にあります。その大きな原因は言うまでもなく、筋肉量の低下であります。逆に言えば年を取っても筋肉量さえしっかりと維持することができれば、疲れにくい肉体を維持できるということでもあります。

そして筋肉量を維持する上で、筋トレをするのはタンパク質をしっかり摂取することが重要です。なぜならば、いくら筋トレをしって筋肉の材量となるタパ質が不足していれば筋肉は作られないからです。そこでタンパク質が豊富な鶏胸肉をしっかりと食べていただきたいと思います。

有機酸の酢ネギ
酢ネギは私たちの疲労をみるみる回復してくれるスーパーフードとして大注目されています。酢スギには酢酸やクエン酸を始めとする良質な有機酸がたっぷりと含まれています。これらの有機酸は筋肉に溜まった疲労物質である乳酸を分解することで、私たちの体の疲れを取ってくれることが知られています。さらに酢ネギの原料である玉ねぎには、非常に高い血液サラサラ効果があることが知られています。

酢ネギを食べて血液がサラサラになれば、それだけ脳の血管の通りが良くなって脳細胞にたっぷりの血液が巡ってくれるようになります。脳に血液が巡れば、脳細胞に栄養や酸素が供給され、眠っている間に疲労物質アデノシンがお掃除されていきます。

抗疲物質フルスルチアミン
フルスルチアミンは、ビタミンB1の誘導体でエネルギー代謝を促進して体の細胞を元気にすると言われています。またビタミンB群やパントテン酸はエネルギーを作って疲労回復に役立つことが分かってきています。

因みにビタミンB群が豊富な食品の代表は豚肉で、パントテン酸を多く含む食品は鶏レバー、鶏ささみ、卵、魚類、牛乳、豆類、カリフラワーなどです。またレモンの含まれるクエン酸も体にあるクエン酸サイクルと言うエネルギー生産プロセスを助けるため疲労回復に効果的です。さらに抗酸化作用のある還元型コエンザイムQ10、茶カテキンも効果的で、還元型コエンザイムQ10はイワシやサバなどの青魚に含まれており、茶カテキンは緑茶、ほうれん草、レバーには葉酸が含まれています。

頭の鍼で脳疲労を改善
鍼灸治療には、体が本来持つ自然治癒力を高める効果がありますが、頭の鍼によって、さらに脳神経細胞が活性化すると、ドーパミン、セロトニンなど脳内ホルモンの正常な分泌を促進させる効果が期待できます。また頭の鍼により、体の鍼治療では改善しきれなかった症状の改善も期待できます。

ぜひお試しくださいね!